Masuk 面白くない、しんどい。なぜ毎日こんなに空虚なんだ。俺もう頑張ったよ、もう十分頑張って生きた。このクソゲーな世の中で、何とか惰性でも生活を送っている俺、
余りにも濃い、波瀾万丈過ぎる人生。最愛の人とは結ばれなかった、夢だったスポーツ選手も大怪我で断念した。女性関係はトラウマものばかり、忙し過ぎる生活や家族、親しい人達の死など不幸が幾重にも重なり、心身と精神のバランスが崩れ、鬱病を突然発症、そこからは毎日が地獄だ。教職に外国語が得意ってだけで就き、生活のため辞めるわけにもいかず何とか続けている、生徒は慕ってくれているが、とにかくしんどい。何がしんどいかって、全てがしんどいんだ。
心のバランスを保たなくてならないために安定剤を服用し、常に手放せない。他者ともある程度の距離を取って過ごしている。残りの人生を無気力に消化していく何とも言えない虚無感。何をやっても楽しくない、力が出ない。休んでもHPが回復しないようなもんだ。寝てもしっかり食べても全く回復しないんだ、むしろマイナス、所謂常時バッドステータス状態だ。
もう戻れないのに過去に常に後悔を感じ、悔しくて仕方ない。寝ても魘されるから自発的に寝れない。寝るのは睡眠薬を使って無理矢理だ。寝起きも最悪だ、悪夢に加え感情が不安定で体が重すぎて暫く動けないんだ。それでも日々は無常に過ぎていく、心身が常に重い、出口など何処にも見えない毎日。こんな風になってしまった弱者に世界は試練、いや地獄でしかない。それに中々理解もされない。
こんなはずじゃなかったのにな……。明るく、無邪気でスポーツも勉強も出来た。友人も沢山いていつも中心に自分がいた。どこからおかしくなってしまったのか……。わからない、だが何でもそつなくこなせていたそれなりのスペックがあった過去の自分と、今をどうしても比較してしまう。これも全部病気のせいだ。俺が何をしたって言うんだよ……。くそっ! 苦しい……。何で苦しい状態がずっと続くんだ、呼吸するのさえしんどいんだよ、どうやったら治るんだよ……。誰か助けてくれよ。神様なんざどんだけ祈ったって無駄だ。勝手に涙が滲む。
「あーあ、もし生まれ変われるなら、以前の元気な自分に戻りたい。それなら今出来ないことがたくさんできるのに……。それに過去に戻れたら、やり直したいこともたくさんだ……」
一人暮らしのマンションの部屋でそんなことを空想して過ごしたり、ゲームや本などのファンタジーな世界に思いを寄せる、それが終わらない現実からの、逃避の一番の方法だ。その日もいつものように空想に耽っていた、はずだった……。だがいつもと違った、突然ぐるりと視界が暗転して、いつの間にか意識を失ったのだ。
眩しい空間で目が覚めたとき目の前にいたのは、見たこともないような美しくも神々しい耀きを放つ女性。深紅の髪に目を奪われる、結ってもいないのにツインテールなくせ毛。にこにこと慈愛に満ちた笑顔で微笑みながらこちらを見つめている。どうやら此方が落ち着くのを待ってくれているようだ。なんだこの空間? ここがどこかは分からないが、とりあえず失礼だと思い、俺はむくりと起き上がった。切り替え、身についている社会人のサガだ。
「えーと、すみません。ここはどこですか? なぜ俺は一体こんなところに……。それにあなたは?」
「ようこそ私の空間へ! 私の名は正義と公平を司る女神アストラリアと申します。ずっと探し続けて、漸く見つけたあなたの願いを叶えるためにここへ案内しました。あなたがいつも焦がれていた、こことは異なる次元の世界に転生させて差し上げるためです。そこで心を病むことなどなく自由に生きてもらって構いませんよ。このサービスは天界でも初の試みなので、あなたしかその世界に転生はさせません。転生者が増えると世界が混乱しますしねー。あっ、もちろん病気は今すぐ完治させてあげますよ、はいっ、治しました! この世界であなたが負った身体的な傷跡は全て抹消して新しい肉体に特典もお付けしますよー。あとはちょっとしたサプライズもね! ブイブイ!」ちょっと古臭いポーズでピースサインをする自称女神様。昭和かな? って、あの一瞬で治してくれたのか?? 一瞬手が光ったように見えただけだが。まあいいか。
だがそれなら! そんなの考えるまでもない。元気になって生まれ変われるなら、もう即答だ、一秒も迷わない! この世界なんてもう先が見えてるし、未練もない! そりゃあね、少々胡散臭いとは思うけどさ、ただの夢かも知れないし、ラノベとかでよくあるお約束的な展開だ。でも実際は俺が初めての転生者になるのか……。うん、悪くない。
「もし本当にそれが叶うのなら、迷いはありません。もう病気とかで苦しくて、生きるのも辛くて色々詰んでたので、新しく人生をやり直せるのならば是非お願いします!」
俺は深々と頭を下げた。胡散臭かろうが何だろうが、もう絶対にこれ以上病気で苦しみたくないし、もはや藁にも縋る思いだ。アストラリアは少し驚いた顔をしながらも笑顔で応えてくれた。
「わ~お、即答ですねー! 正直ですねー、そういう人、私は好きですよー!だからあなたの望む転生をお約束しましょう。ボーナス特典盛りだくさんで! あっ、ゲームは好きですか? 剣と魔法のファンタジー世界ですよー! 無双したくないですかー?」
段々とテンションが上がって崩れた喋りになっていく。多分これがこの女神様の素の口調なんだろう。軽い、何と言うかとってもノリが軽いんだわ。とても正義と公平を司るような女神様には見えない。しかもなぜ転生の仕事なんてしてるんだ? それに俺を探し続けてたとは? うーん謎だ。転生ってことは俺は死んだことになるのか? まあそれは今となってはどうでもいいか。もはやこんな世界にこれっぽっちの未練も全く微塵も更々ないのだから……。いや、教え子達のことは気にはなるか…、すまんなこんな先生で……。
「確かに、ファンタジー系のRPGは好きだなあ、ドラゴンのとか最後のファンタジーのとか。無双はどうかと思うけど。コツコツとレベリングも嫌いじゃないしなー」
少し考えながら顎に手をやって答える。
「新しい肉体ってことは容姿も変えられるんですよね?」
「もちろんですよー、ムフフー!」自分の外見に対してそこまでのコンプレックスがあるわけではない。モテなかったというわけでもない、だけど老いていくのは嫌だな、体型が崩れるのも。常にベストな体型や状態を維持したい。せっかくだし新しく見た目も気分も変えてみたい。ちょっとワクワクしてきた。気分が高揚してくるし、本当に病気を治してくれたみたいだ、思考がクリアになって心も体も軽くなっている。
「なら歳を取りたくないので、不老不死で、そんで太らないとか、崩れない様な体質にしてください。見た目も新しく元気で自信も体力も漲っていた、18~20歳辺りで固定、今よりはちょいキレイ目にして、スラリとしたモデル体型でお願いします。それに折角のファンタジーなので赤い髪とか金髪とかにしてください」
こっちの要望にアストラリアはうんうんと、目をキラキラと輝かせて頷く。神様っていうか無邪気な女の子って感じだ。何だか親近感が湧く、不思議な方だな。
「なるほどなるほどー、いいですねーはっきりしてて。他にはありますかー? 何でも遠慮しないで言ってみてくださいねー」
うーん……、と頭を捻る。どうせならここでいい感じにスタート切りたいよな。後からやっぱこうでした、とかは嫌だしダサい。真面目に考えよう。と、暫く考え込む。
「そうですね、武器防具を度々買い替えたりするのも整備するのも面倒くさそうなので、ずっと使える武器防具で、でも重たい装備はしんどそうなので身軽な感じかな。同様に身軽ってことで、持ち物を収納できるような便利な機能があると助かります」
とりあえずはこんなとこかな、ラノベなんかじゃよくある展開だ。とアストラリアを見ると、彼女は満面の笑みで頷き、
「いいですねー、決断力もありますねー。これがあなたの生来の性格なんですねー。病気治ってよかったですね! ではでは抜けがあっても困りますし、装備も用意するのでー。どんな武器が使いたいですかー?」
そうか、そういう設定もあるな。でもそれならもう決めてある。
「やっぱファンタジーなんで剣ですね、カッコイイけど両手剣とかは扱いづらそうなんでオーソドックスな片手剣で。魔法も使えるなら使いたいし、
女神様なんだし、痛いデザインはさすがにないだろう。目の前にいるアストラリアは何とも形容し難い、白と赤を基調とした神々しいオシャレなドレスのような服を着ているんだし。
「OK、OK、じゃあ片手直剣で。それにやっぱり日本人と言えば刀ですよねー。なので日本刀もサービスしちゃいます! 更にサブウェポンとしてナイフもね」
「おぉう……、それは熱い! ありがとうございます。何だろう、久しぶりにワクワクしてきました!」胸が高鳴る、ずっと忘れていた高揚感のある感情だ。
「アハハ、正直ですねー! あなたのことが本当に気に入っちゃいましたよ! あなたを見つけ出せて本当に良かったです。ではお任せください。前世での記憶からあなたが無意識に不都合と感じているものはきれいさっぱり封印しておきますから、新世界を目一杯楽しんで下さいね! それが神々の、そして私の願いでもありますから。それではいってらっしゃーい!」
その瞬間、急に目の前が点滅し始めた、更に目が眩むほど眩しい光に包まれる!
「うわっ! 何だこれっ?!」
ニコニコ笑顔で手を振るアストラリアがいる謎空間が消えていくのと同時に意識も遠のいていく。でも今の出来事が本当なら、目が覚めたときにはきっと新しい世界が広がっている。今回は病むことなく人生を楽しく明るく生きてやるんだ。そう願いながら、俺は意識を手放した。
(……大虐殺? 物騒だな、でも虐殺ってことはそれを行った奴らが居たってことだよな? 狂った奴らが核兵器みたいなもので世界が崩壊して人類が滅ぶくらいの爆撃とかしたのか?) 虐殺だから誰かが行ったというのが妥当だろう。自然破壊で滅ぶってのも、巨大隕石が落ちたってのもなんか違う気がする。【そうですね、人間を絶滅させるくらいの兵器とかはあったでしょう。それでも一人も残さず絶滅させるとなると、不可能ですね。シェルターのようなものに避難したり、運良く助かる者もいるでしょうから】 ダメだ、俺の頭じゃそんな芸当が出来そうな人間はいるわけがない、としか考えられない。ん、待てよ。確信がないがそれが出来そうな存在なら居るのは居る。でも……、まさかだけど。【カーズさんの推測は当たっていますよ。そんな芸当が出来るのは人間以上の存在】(ならやっぱり……)【……神です】(マジかよ……。何となく察しはついてたけど、神様直々に手を下すとか普通にない気がする。でも俺の勝手な見識だし、地球で神の存在なんて感じたこともないしな)【地球の神々は基本的に無干渉ですね。気が向いた時だけ歴史を修正する程度ですから、決して人前に姿を現しませんし、宗教なんて人間が勝手に創ったものですよ。中には人に紛れて遊んで暮らしてる神も居たりしますが。ですがこの世界ではもうすでに2回も神による大きな変革が行われています】(てことは2回もその大虐殺が行われたってことだよな? ……どうしてそんなことが?)【1度目は約1万年前。そのとき私はまだ生まれていませんでした。2度目は5000年ほど前で、それがニルヴァーナというこの世界の成り立ちです。でも人間たちはそのときの歴史に関することを知りません。そしてニルヴァーナという意味すら知らずにこの世界をそう呼んでいるに過ぎません。誰がそう名付けたのさえ知らないのです】(2回も世界を変革したのはなぜなんだ……? 人間は何をしたんだよ?!) 滅ぼされるなんてよっぽどだ。地球でも同じことが起こる可能性もあるけど、最早俺には関係のない話だ。地球なんざ1回滅んだ方がいいと思う。アリアはふう、と溜め息を漏らしながら、また話し続ける。神様が溜め息を吐くほどのことなんだろうか?【1度目は今の地球と酷似していると言った方が分かり易いですね。人間は互いに互いの利益の為に争いを続けました。
魔物の群れに向けて魔法を放つ、サンダー・ジャベリン。文字通り雷の槍だ。スキル弱点看破で目に映るのは相手の眉間だ。そこに標的化して狙いを定めて魔法をコントロールする。もう敵の数に合わせて発動できるくらいにはなった。超成長の恩恵だね。 ズドン! バチバチッ! バリバリバリィ!! 眉間を射抜かれながら追撃で電流が敵の全身を駆け巡る。今相手にしているのはビッグ・ボア、所謂でっかい猪だ。食べると美味いらしい。10頭程の群れだが、3頭急所を外してしまったのでまだまだコントロールが足りないな。仕方ない、残りは武器で対応しよう、鞘から抜き取ったのは女神刀。さすがに和名の日本刀には横文字は使わなかったみたいだ(笑) アリアさん、分かってらっしゃる。 まだ『抜刀術』は難しい、鞘の中で摩擦を起こし剣閃スピードを上昇させるということだが、刀剣を鞘から抜き放ち、さらに納刀に至るまでをも含めた動作が、高度な技術を有する武芸として成立しているくらいだ、一朝一夕で出来るものではない、普通に振り回すのがまだ精一杯だ。 残りの猪に向かって加速する。丁度3頭魔法で痺れて眼前に並んでくれている、「アストラリア流刀スキル」 弱点の眉間に向けてほぼ同時に瞬速の3連撃を1頭に1撃ずつ放つ、虎のツメの如き三連撃。「虎爪閃!」 ザザシュッ! ザヴァァーン!!! 全て的確にヒットした。断末魔とともに巨体が崩れ落ちる。<レベルアップしました、スキルの更新を行います> お、レベルも上がったな。「ふう、結構頑張ったな、ちょっと休憩しよう」 自身に新しく習得した気配遮断と物理結界に魔法結界を張る。俺の存在が認識されにくくなる。透明人間みたいなもんだ。とりあえず狩ったビッグ・ボアを片っ端から異次元収納庫に突っ込む。アリア曰く、【狩った魔物は体の部分が素材になったり、食材になったりしますからー、街のギルドで売って路銀に代えましょう。その時についでに冒険者登録をしておくといいでしょうねー】 ということらしい。なので最初に倒したクマさんから全部そこに突っ込んである。ちなみにこの中に入れている間は時間の制限がないらしい。新鮮なままお届け可能なのだ。クール便のようなものだということにした。そしてどのくらいものが入るのか聞くと、
さて、流れ的にバトルする羽目になってしまった。でもね、ぶっちゃけ俺結構ビビりだよ、他人にはバレないように強がってきたけどね。前世でもなるべく諍いは避けてきたしなあ。 でも売られたら買ってしまうスタンスだったし、根本的には短気なんだよ。喧嘩くらいは学生時分まではよくしてたから。相手がこっちよりビビってたら怖くないんだよね。もうそういうときってアドレナリン出まくってるし、スポーツでもゴール近辺だと気持ちが昂って仕方なかった。まあ冷静じゃないよね、本能のままにぶっぱするみたいなもんだし。 でもどれも対人間。魔物とか、RPGの中でしか戦ったことないから。子どものときに近所の狂暴な犬と死闘を繰り広げたくらいなだけだ。 冷静に考えて、平和な世界に生きてきた人間がそんなの相手に戦えるかい? 野生動物とか、家畜の牛やら馬、多分羊にも負けると思うよ、だって角生えてるし。早速ビビりが発動しながらアリアに尋ねる。(モンスター? 魔物? ってそんなのどこにいるのさ? 結構長話ししてたと思うんだけど、それらしきものは全く見なかったぞ。森の中だってのに)【えーと、それはですねー私が結界を張ってたんですよー。目覚めた瞬間に襲われるとか嫌じゃないですかー。カーズさんぐっすり眠ってましたし。それに私と話す時間も必要でしたしねー】 けらけらと笑いながら話すアリア。なるほど、結界ときたか、サラッとすごいこと言ったな。もうずっと張っておいて欲しい。(ほほうー、ならそれを解除したら?)【普通にこちらの存在が周囲に認識されますねー。魔物の方が人間よりも感覚器官が優れていますから。攻撃的な魔物だとすぐやって来るでしょうねー(笑)】(何それ、怖い。ごめん、胃が痛い気がする。持病の仮病が発病したみたいだわ)【気のせいです。しかも自分で仮病って言っちゃってますよー。小粋なトークで誤魔化さないでく下さーい。そんな小ネタ言える余裕があるなら大丈夫ですよー。この辺りの敵はぶっちゃけ弱いですから。スタート地点にここを選んだのも、しっかりと経験を積むためって理由がありますからねー。さあさあ、起きて準備して、結界を解きますよー】 止める間もなくアリアが結界を解く。パリーン、と何か薄いものが割れるような感覚がした。結界解除の音だろう。うーむ、弱い敵ねー。古代竜や
(アリア、どの装備もSランクなんだけど……。しかも補正値えげつないし。どんなもので出来てんの? とりあえずこのバトルドレス。ドレスって、俺男だよ) トンデモ素材が使われているのは間違いないだろう。でもそこはちゃんと把握しないといけない。先ずはこの服の見た目だ。黒のロングコートにもワンピースのようにも見えるが腰から上は体にフィットした服になっている。大きな襟が左右に2枚ずつ胸の下あたりで止めてある。インナーに白と黒のシャツの様なものがあり、首の半ばまでの長さだ。左右の肩にはショルダーガード、肩から下はまるでメイド服。肩回りが膨らんだデザインに、袖は長く肘の辺りからフレアーなデザインで袖先にはレースのフリルがご丁寧に付いている。それは腰から下の部分のコートのようなスカートみたいな部分も同じで裾にはこう、メイドさんのひらひらでギザギザなフリルだ。 どう形容したらいいのか、ぶっちゃけ俺のファッションに関する語彙力では無理だなあ。腰から下の前方は開いており、身に着けているのはズボンだ、良かった。腰から下のコート部分にはこれまたショルダーガードの素材と同じようなプレートがこう、鱗のように重ねて装着してあり、防御力も高そうだ、イメージ的にステイナイトな剣使いぽい。そして膝下くらいの茶色のブーツ、踵部分に羽がデザインしてある。これはぶっちゃけカッコイイ。 全体的に黒を基調としているが、縁取りは赤、レース部分は白だ。胸の上部には硬い金色のプレートが付いている。そして手には指先だけ出ているグローブ。ナックルの部分に超硬い金属のようなものが付けられている、これで殴られたら痛いだろう。見たらわかる、絶対死ぬやつやん普通に。でもね、なんと言っても軽い。凄く伸縮して動き易そうなのだ。【まあ結構中性的なデザインで作りましたしねー。レースやフリルは私の趣味でーす! もしMPが枯渇しかけたら女性側に肉体が引っ張られてしまいますからー、そんなときでも違和感なく着られますよー!】 言い切りやがったよ……、ものすげー潔いな……。(やっぱ自分の趣味じゃないか。でもそこまで自信満々で言われちゃあ、いっそ清々しいよ。で、何で出来てるの? てかどうしても女にさせたいのかよ?)【ふふーん、地上で最も硬いと言われるような鉱石素材、オリハルコンやアダマンタイト、ガマニオンに|星
【それでは『ステータス・オープン』と声に出すか、心の中で念じてみて下さい】 周囲には誰もいないので、アリアに言われた通り口にしてみる。するとゲームのステータス画面のようなものが表示される。★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★<カーズ(・ロットカラー)∞歳(18~20歳相当)男 魔法剣士>称号 :女神の戦士Lv :1 (+50/装備補正)HP :1200(+500/装備補正)MP :2400(+500/装備補正)筋力 :100 (+250/装備補正)敏捷 :150 (+150/装備補正)魔力 :1200(+350/装備補正)物理耐性:150 (+2650/装備補正)魔法耐性:150 (+2650/装備補正)幸運値 :50 (+100/装備補正)<装備><アストラリアソード(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<女神刀(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<アストラリアナイフ(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<バトルドレス(S:カーズ専用)>物理耐性:1200魔法耐性:1200(込めた魔力量により最大値増加)付与効果:自動回復(S:100/秒でHP・MPを回復する) :状態異常耐性(S) :魔力ヴェール(S:物理/魔法防護膜を自動展開/ 込めた魔力量で範囲/効果上昇) :HP+500 :MP+500 :筋力+150 :敏捷+150 :魔力+150 :物理耐性+150 :魔法耐性+150<ドラゴングローブ(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)物理耐性:550魔法耐性:550付与効果:衝撃追加(S:竜の息吹 :込めた魔力属性のブレスが発動)<ペガサスブーツ(S:カーズ専用)>物理耐性:350魔法耐性:350付与効果:飛翔(魔力を込めると発動)<グリ
目が覚める。大の字に寝ていたようだ。見たことのない木々の間から真っ青な空が見える。森かな? マジかよ……どうやら本当に転生したみたいだ。大きく深呼吸をすると、田舎に帰ったときよりも美味しい空気だった。都会の喧騒で汚染されたものと違い、沁みわたるような感覚を覚えた。とりあえず起きよう、上半身を起こしたとき頭の中で声が響く。【あっ、おはようございますー。私でーす、私ー】 ん? このはっちゃけたときの井上麻里奈さんみたいな声は……、どうやら女神アストラリアの様だな。(えーと、私私詐欺ですか?) 心が軽く体も力が漲るようで、憑き物がおちたように思考もクリアだ。【切れっ切れの返しですねー。そうです私ですよー、あなたの素敵な女神アストラリアですー。色々と設定し忘れたことがあるので、これから決めていきましょう。それと冒険や戦闘の指南です。所謂チュートリアルってやつですねー】 なんか抜けてる女神様だな。でもとっつきやすくて気安い感じだ。(何でしょうか? 決めてないこと?) うーん、と頭を捻る。【ほらー、まずは名前ですよー名前! 日本人ネームのままだとここでは違和感があるでしょうから、現在の名前から多少いじって作りましょう】 そういうもんか。ナギトでもいいけどそのまんまだしなあ。違和感ないとは言い切れないし、新しい人生だ。この際変えるのもアリだな。(じゃあ、和士の和のところを別読みで、カズ、ファンタジーぽいなら『カーズ』でいいですか?) ぶっちゃけ名前とかどうでもいいんだが、折角だしな。乗っておこう。ゲームでもたまに使う名前だし。因みによく間違われるが、呪いはカース、curseだ。(名字はどうしましょうか? アストラリア様、センスのある変換お願いします) 丸投げでも女神様のがセンスは良いだろう。ぶっちゃけそういうのめんどくさいんだよね。【あらー、いいんですかー? では一色をもじって……今のカーズさんはご希望通り赤髪に毛先に金のメッシュが入ったような色合いですから、まあ赤色ってことで『ロットカラー』なんてどうでしょうかー?】 流石の女神様。カッコイイ。ロットとかロッソってラテン語で赤だよな。てかそんな色になってるんだな。長めの前髪を引っ張って見てみる。うん、近すぎてよくわからんな。(カーズ・ロットカラーか、いいですね! もうそれでOKで