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第一章 0  Prologue・今と始まりの物語②

Penulis: KAZUDONA
last update Terakhir Diperbarui: 2025-12-02 18:12:03

「はぁ……」

 面白くない、しんどい。なぜ毎日こんなに空虚なんだ。俺もう頑張ったよ、もう十分頑張って生きた。このクソゲーな世の中で、何とか惰性でも生活を送っている俺、一色 和士イッシキ ナギト

 余りにも濃い、波瀾万丈過ぎる人生。最愛の人とは結ばれなかった、夢だったスポーツ選手も大怪我で断念した。女性関係はトラウマものばかり、忙し過ぎる生活や家族、親しい人達の死など不幸が幾重にも重なり、心身と精神のバランスが崩れ、鬱病を突然発症、そこからは毎日が地獄だ。教職に外国語が得意ってだけで就き、生活のため辞めるわけにもいかず何とか続けている、生徒は慕ってくれているが、とにかくしんどい。何がしんどいかって、全てがしんどいんだ。

 心のバランスを保たなくてならないために安定剤を服用し、常に手放せない。他者ともある程度の距離を取って過ごしている。残りの人生を無気力に消化していく何とも言えない虚無感。何をやっても楽しくない、力が出ない。休んでもHPが回復しないようなもんだ。寝てもしっかり食べても全く回復しないんだ、むしろマイナス、所謂常時バッドステータス状態だ。

 もう戻れないのに過去に常に後悔を感じ、悔しくて仕方ない。寝ても魘されるから自発的に寝れない。寝るのは睡眠薬を使って無理矢理だ。寝起きも最悪だ、悪夢に加え感情が不安定で体が重すぎて暫く動けないんだ。それでも日々は無常に過ぎていく、心身が常に重い、出口など何処にも見えない毎日。こんな風になってしまった弱者に世界は試練、いや地獄でしかない。それに中々理解もされない。

 こんなはずじゃなかったのにな……。明るく、無邪気でスポーツも勉強も出来た。友人も沢山いていつも中心に自分がいた。どこからおかしくなってしまったのか……。わからない、だが何でもそつなくこなせていたそれなりのスペックがあった過去の自分と、今をどうしても比較してしまう。これも全部病気のせいだ。俺が何をしたって言うんだよ……。くそっ! 苦しい……。何で苦しい状態がずっと続くんだ、呼吸するのさえしんどいんだよ、どうやったら治るんだよ……。誰か助けてくれよ。神様なんざどんだけ祈ったって無駄だ。勝手に涙が滲む。

「あーあ、もし生まれ変われるなら、以前の元気な自分に戻りたい。それなら今出来ないことがたくさんできるのに……。それに過去に戻れたら、やり直したいこともたくさんだ……」

 一人暮らしのマンションの部屋でそんなことを空想して過ごしたり、ゲームや本などのファンタジーな世界に思いを寄せる、それが終わらない現実からの、逃避の一番の方法だ。その日もいつものように空想に耽っていた、はずだった……。だがいつもと違った、突然ぐるりと視界が暗転して、いつの間にか意識を失ったのだ。

 眩しい空間で目が覚めたとき目の前にいたのは、見たこともないような美しくも神々しい耀きを放つ女性。深紅の髪に目を奪われる、結ってもいないのにツインテールなくせ毛。にこにこと慈愛に満ちた笑顔で微笑みながらこちらを見つめている。どうやら此方が落ち着くのを待ってくれているようだ。なんだこの空間? ここがどこかは分からないが、とりあえず失礼だと思い、俺はむくりと起き上がった。切り替え、身についている社会人のサガだ。

「えーと、すみません。ここはどこですか? なぜ俺は一体こんなところに……。それにあなたは?」

「ようこそ私の空間へ! 私の名は正義と公平を司る女神アストラリアと申します。ずっと探し続けて、漸く見つけたあなたの願いを叶えるためにここへ案内しました。あなたがいつも焦がれていた、こことは異なる次元の世界に転生させて差し上げるためです。そこで心を病むことなどなく自由に生きてもらって構いませんよ。このサービスは天界でも初の試みなので、あなたしかその世界に転生はさせません。転生者が増えると世界が混乱しますしねー。あっ、もちろん病気は今すぐ完治させてあげますよ、はいっ、治しました! この世界であなたが負った身体的な傷跡は全て抹消して新しい肉体に特典もお付けしますよー。あとはちょっとしたサプライズもね! ブイブイ!」

 ちょっと古臭いポーズでピースサインをする自称女神様。昭和かな? って、あの一瞬で治してくれたのか?? 一瞬手が光ったように見えただけだが。まあいいか。

 だがそれなら! そんなの考えるまでもない。元気になって生まれ変われるなら、もう即答だ、一秒も迷わない! この世界なんてもう先が見えてるし、未練もない!  そりゃあね、少々胡散臭いとは思うけどさ、ただの夢かも知れないし、ラノベとかでよくあるお約束的な展開だ。でも実際は俺が初めての転生者になるのか……。うん、悪くない。

「もし本当にそれが叶うのなら、迷いはありません。もう病気とかで苦しくて、生きるのも辛くて色々詰んでたので、新しく人生をやり直せるのならば是非お願いします!」

 俺は深々と頭を下げた。胡散臭かろうが何だろうが、もう絶対にこれ以上病気で苦しみたくないし、もはや藁にも縋る思いだ。アストラリアは少し驚いた顔をしながらも笑顔で応えてくれた。

「わ~お、即答ですねー! 正直ですねー、そういう人、私は好きですよー!だからあなたの望む転生をお約束しましょう。ボーナス特典盛りだくさんで! あっ、ゲームは好きですか? 剣と魔法のファンタジー世界ですよー! 無双したくないですかー?」

 段々とテンションが上がって崩れた喋りになっていく。多分これがこの女神様の素の口調なんだろう。軽い、何と言うかとってもノリが軽いんだわ。とても正義と公平を司るような女神様には見えない。しかもなぜ転生の仕事なんてしてるんだ? それに俺を探し続けてたとは? うーん謎だ。転生ってことは俺は死んだことになるのか? まあそれは今となってはどうでもいいか。もはやこんな世界にこれっぽっちの未練も全く微塵も更々ないのだから……。いや、教え子達のことは気にはなるか…、すまんなこんな先生で……。

「確かに、ファンタジー系のRPGは好きだなあ、ドラゴンのとか最後のファンタジーのとか。無双はどうかと思うけど。コツコツとレベリングも嫌いじゃないしなー」

 少し考えながら顎に手をやって答える。

「新しい肉体ってことは容姿も変えられるんですよね?」

「もちろんですよー、ムフフー!」

 自分の外見に対してそこまでのコンプレックスがあるわけではない。モテなかったというわけでもない、だけど老いていくのは嫌だな、体型が崩れるのも。常にベストな体型や状態を維持したい。せっかくだし新しく見た目も気分も変えてみたい。ちょっとワクワクしてきた。気分が高揚してくるし、本当に病気を治してくれたみたいだ、思考がクリアになって心も体も軽くなっている。

「なら歳を取りたくないので、不老不死で、そんで太らないとか、崩れない様な体質にしてください。見た目も新しく元気で自信も体力も漲っていた、18~20歳辺りで固定、今よりはちょいキレイ目にして、スラリとしたモデル体型でお願いします。それに折角のファンタジーなので赤い髪とか金髪とかにしてください」

 こっちの要望にアストラリアはうんうんと、目をキラキラと輝かせて頷く。神様っていうか無邪気な女の子って感じだ。何だか親近感が湧く、不思議な方だな。

「なるほどなるほどー、いいですねーはっきりしてて。他にはありますかー? 何でも遠慮しないで言ってみてくださいねー」

 うーん……、と頭を捻る。どうせならここでいい感じにスタート切りたいよな。後からやっぱこうでした、とかは嫌だしダサい。真面目に考えよう。と、暫く考え込む。

「そうですね、武器防具を度々買い替えたりするのも整備するのも面倒くさそうなので、ずっと使える武器防具で、でも重たい装備はしんどそうなので身軽な感じかな。同様に身軽ってことで、持ち物を収納できるような便利な機能があると助かります」

 とりあえずはこんなとこかな、ラノベなんかじゃよくある展開だ。とアストラリアを見ると、彼女は満面の笑みで頷き、

「いいですねー、決断力もありますねー。これがあなたの生来の性格なんですねー。病気治ってよかったですね! ではでは抜けがあっても困りますし、装備も用意するのでー。どんな武器が使いたいですかー?」

 そうか、そういう設定もあるな。でもそれならもう決めてある。

「やっぱファンタジーなんで剣ですね、カッコイイけど両手剣とかは扱いづらそうなんでオーソドックスな片手剣で。魔法も使えるなら使いたいし、魔法剣士ルーン・セイバーみたいなイメージにして下さい。防具は女神様のセンスにお任せします」

 女神様なんだし、痛いデザインはさすがにないだろう。目の前にいるアストラリアは何とも形容し難い、白と赤を基調とした神々しいオシャレなドレスのような服を着ているんだし。

「OK、OK、じゃあ片手直剣で。それにやっぱり日本人と言えば刀ですよねー。なので日本刀もサービスしちゃいます! 更にサブウェポンとしてナイフもね」

「おぉう……、それは熱い! ありがとうございます。何だろう、久しぶりにワクワクしてきました!」

 胸が高鳴る、ずっと忘れていた高揚感のある感情だ。

「アハハ、正直ですねー! あなたのことが本当に気に入っちゃいましたよ! あなたを見つけ出せて本当に良かったです。ではお任せください。前世での記憶からあなたが無意識に不都合と感じているものはきれいさっぱり封印しておきますから、新世界を目一杯楽しんで下さいね! それが神々の、そして私の願いでもありますから。それではいってらっしゃーい!」

 その瞬間、急に目の前が点滅し始めた、更に目が眩むほど眩しい光に包まれる!

「うわっ! 何だこれっ?!」

 ニコニコ笑顔で手を振るアストラリアがいる謎空間が消えていくのと同時に意識も遠のいていく。でも今の出来事が本当なら、目が覚めたときにはきっと新しい世界が広がっている。今回は病むことなく人生を楽しく明るく生きてやるんだ。そう願いながら、俺は意識を手放した。

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